2017-06-22,Thu.

夕方、猛烈な眠気を感じて、眠った。夢を見た。怖かった。

父と母が庭のテラスでお茶を飲んでいる。知らない女の人が一緒に座っている。女の人は中空を見つめ呻き声のような歌声のようなおかしな音を発し続けている。痩せてちりちりふわふわとした長い焦げ茶の髪、白い長袖のTシャツの上に濃淡のピンクで隙間なく水彩画ふうの花のように見える細かい模様がプリントされた薄い布地のスリップワンピースを着ている。一瞬若い女だと思ったが歳をとっている。浅黒い肌は弛んで皺を作っている。この人は誰と両親に訊くと困ったような顔で勝手に入ってきてしまった、話しかけても何も聞いていない、見ていないと言う。私はすごく怖くなる。〜記憶が飛ぶ〜気づくと女の人は声を出すのをやめテラスから降りて先月まで金魚の入っていた(今はメダカが入っている)鉢の側に椅子を置いて座り、顔に何かを塗りたくっていた。こちらに向けられた顔を見て私は声を振り絞り悲鳴をあげた。泥のように不透明で粒子を感じる顔料、白と黒でぎろりと丸い目を描き口に赤い線を引きそれ以外の肌に青黒い灰色をべたべたと。元の顔は消えている。〜記憶が飛ぶ〜その女性の所有者(保護者という言葉を使うのが正しいのかもしれないけれど、何故だろう、私にはこの人が女性を「所有」しているように見えた)、背が低くて太って浅黒くて険悪な表情をした(顔の造作自体は沖縄の人のように思えた)おばさんがやってきて私たち家族に嵐のように文句を言い、女の人を各辺1.5メートルほどの立方体の檻に詰め込んでリヤカーのようなものに積んで去っていった。女の人は檻の中で苦しみながら獣のように吠えていた。〜記憶が飛ぶ〜夜テラスで私は見慣れない白磁の食器(のようなもの)をいくつも見つける。次の日グレーの夏用スーツを着た明るく横柄な態度の脂ぎった初老の男性が訪ねてきてそれを譲ってくれと父に頼んでいるのを見る。とても怖い。何もかもが怖い。目が醒めると胃が捩れるように痛んでいた。すごく怖い。

2017-06-15,Thu.

野際陽子が死んだ。

野際陽子は私にとって、「幸せ」(つねづねこのブログに書いてきた意味での幸福)を象徴する存在だった。野際陽子のすべての演技に私は私の「幸せ」の完璧な表現を見た。そのように感情移入した。

2017-06-08,Thu.

今このしゅんかんに意識が失われて、二度と戻ってこなければいいのに。たとえ帰ってくることになるのだとしても、一瞬でも消える夢を見たい。だって私は、眠っているときも起きているのだ。

 

起きている。私は眠っているときでも肉体のことを忘れない。肉体の状態がつねに意識の中を通過している。起きているときも、眠っているときも。音が聞こえる。肉体の中の音と、外の音。皮膚の全ての感触がある。

2017-05-29,Mon.

楽しい、嬉しい、幸せ、と、いつでも心の中で唱え続けていないと、それらの気持ちを全て取り零して絶望の沼に沈んでいってしまいそうで恐ろしいのです。踏みしめたパンは微力であってもその存在をいつでも意識のもとに置いておかなければ消えてしまい、私は今までとは比べ物にならない速さで沼に沈みはじめるかもしれません。

2017-05-27,Sat.

映画『メッセージ』を観に行く。なんとなく各所で評判高いというイメージだったが、実際に観てみて正直期待外れだと感じた。音楽や映像はすごく良いのに、内容や根底の思想についての考察がきちんとなされていない。制作者は自分の頭の中で整理できていないし更には適切に熟考すらしていないことを「なんとなく深そうなことを言っていそうな映画」として表現してしまったのではないか。(何を書くとネタバレになるかわからないのでこれくらいにしておく)

 

 

私がこの映画に否定的な感想を抱くのは、閉所恐怖症の気があるからだという可能性もあるではある。映画館そのものが大きな閉所と言えるのだけれど、それは一番後ろの席(空間の広さを感じられる)を選んだりレスキューレメディを使用したりして平静を保てる程度のものだ。しかし今回の映画は映像自体の閉塞感がすごくて、途中で席を立たなかったのが奇跡だと思えるくらい息が苦しかった。

2017-05-24,Wed.

青木画廊に行き『一角獣の変身〜青木画廊クロニクル 1961-2016』を購入する。澁澤龍彦瀧口修造種村季弘金子國義四谷シモンマンディアルグ夫妻、エトエトラエトセトラ、幻想文学、幻想絵画、シュルレアリスム、に興味のある人は必見の、これ一冊でほとんど辞書のような役割が果たせそうなくらい内容の濃い歴史書。豊富な写真、図版、興味深い対談、様々な文筆家がかつての展覧会に寄せた文章の数々に圧倒されます。今まで知らなかったアーティストも多く、興味の幅がいささか広がりすぎるのでキケンかもしれない。

 

喫茶店でこの本をパラパラ捲った後、三越の化粧品売り場を徘徊する。ジョーマローンのレア・ティー コレクションのコロンを試し(魅力的なコレクションだった。烏龍茶が非常に気に入ったけれど買わないだろう。年を重ねた人に似合う香りなのだ。深みと含蓄と温もり、地の底から昇ってくるような濃厚で甘く纏わりつく香り、しかしそれだけでは終わらないギラリとした冷たく苦く恐ろしいもの(闇の底からの叫び声の残響)を秘めている。)、アナスイでメタリックなターコイズブルーのマニキュアを買う。アナスイで買い物をしたのは初めてのことだが、ハマりそうな予感(今まではシャネルのような質実剛健なブランドにしか興味がなかった。正直、アナスイなんて見た目がチャラチャラしてるだけでしょ、と思っていた。今はそのキラキラゴテゴテしたパッケージ、乙女心を擽るツンとした薔薇の香りに惹かれる。実際にベースメイクのサンプルやマニキュアを使ってみてただチャラチャラしているだけじゃないってこともわかったし)。

2017-05-23,Tue.

歯医者で歯を磨いてもらった。歯間ブラシの大きくなったような形のブラシで表面を磨き、プラスチックの楊枝みたいなもので歯の間を。最後に、シトラスの味がする黄色いペーストをつけて先っぽが回転する歯医者っぽい器具で表面を滑らかにしてくれた。

 

口をゆすいだ水が魚臭いと感じた。歯医者の奥の暗い部屋には青く照らし出された水槽がたくさんあって種々様々の魚が飼われている。水換えをして捨てる水をタンクに貯め、患者が口をゆすぐための水はこのタンクから出されるのだ。若い歯科衛生士の女は夜になると熱帯魚の喉を覗き込み植物の産毛みたいな透明の細かい歯を丁寧に磨いてやる。