ほわい、はう?

忘れられると思ってた。Tさんのことを。Tさんへの恋を。諦められると思ってた。6月にTさんに出会って3ヶ月が経った。私はどうしてTさんに恋をしたんだろう。いつTさんに恋をしたんだろう。あのひとが、円い眼鏡をかけていたからだろうか?あのひとが、私と同じに右利きなのに右手に腕時計を着けていたからだろうか?あのひとが、目だけで微笑むから?あのひとが、私と同じようにして人と関わっているから?あのひとが、大友克洋が好きで、それを知った私が『童夢』を、はじめての大友作品を読んで大友にはまったから?あのひとが、もう一つくらい仕事やりたい、と言ったから?あの人の描いた絵を見たから?あのひとの手の形が美しいと思ったから?あのひとの、声が、好きだから?あのひとの、名前が?あのひとの、纏う空気が?あのひとの、感性?服装?「本」を愛す、モノを蒐める、そんな習性に対する仲間意識から?
私はあのひとに恋をしてる。でも、だから?私はどうしたらいい?あのひとは私に恋をすることはないのだ。きっと、あのひとは別の誰かを愛してる。私よりも、あのひとに近い誰かを。私より「本」に近い誰かを。

7月の終わり、私はこの想いをどこかにやってしまわなければならないと思った。忘れてしまわなければ、諦めなければ、と。しかしいまだに私はTさんに恋をしている。気がつけば私の望む未来を夢想している。夢にまで、私の望む未来は侵入してきている。夢の中で、Tさんは私に笑いかけ、私たちは一緒に歩き、はにかんだ笑顔を交わす。夢の中で、私とTさんは二人だけの朝食を摂り、または夕食を、昼食を摂り、言葉を交わし、共に散歩している。夢の中では二人は手を繋ぎ、漣のように笑って、お互いの内面に干渉し合い、言葉によって気持ちを伝え、思い出を語り、どこか知らない本屋を冷やかしている。

こんな夢から覚めるとき、私は決まって虚しくなる。こんな未来は永遠に訪れない。こんな救いは永遠に訪れない。

私はどうしたらいい?