2013-04-16,Wed.

頭痛がやまなくて、やまなくて、やまなくて。そういえば、3月のあの日も頭痛がしていた。3月18日。さいごにTさんに会った日。あれからTさんに会ってない。22日から2週間、鳥取に合宿で車の免許をとりに行った。鳥取では植田正治写真美術館に行こうと思ってたけれど、予想外に遠くてかなわなかった。あの日、Tさんが、植田正治美術館に是非行くといいよと言ってくれたのだった。鳥取にはDrPepperがなかった。渇きつつ、砂丘を見た、巨大な砂遊び場、永遠に続くかのような、黄色人種の肌の色。砂の畝りのむこうに、紺碧の海。白い光がさらさらと浮かんでいた。にしからひがしへ高速バスで帰ってきて、2日後くらいに免許センターへ行った。試験を受けて、免許をもらった。夜毎、あの幸せな3月18日のことを思い出している。ことの発端は、3月15日に私がTさんにメールを送ったことではなかったか。「大友克洋ポスター展というの、やっていたんですね」。その日は、ポスター展の最終日の前日だった。私は展覧会のはじまる前から、Twitterでその存在を知っていた、Tさんに連絡をとる口実が欲しかったから、その日、あたかも今知ったばかりというふうていで、メールを送ったのだ。次の日になって、Tさんからメールがきた。私がちょうど、ポスター展を観に代官山に居た時間だった。まさか返事が来ると思っていなかったので、大変驚いた。内容、とりあえずS書房に顔を出せということ、展のことは知らなかったということ。私は、今ポスター展に来てるんですというような返事をした。すると珍しく、間髪を入れずに返事が。来いって言っといて申し訳ないが今日は二人ともいません。(注・二人とは、TさんとKさん。Kさんはいつもお世話になってる、古本屋の店員さん)。んで、まあ色々やりとりがあって、何故か突如18日の14時中野の駅前集合、ということになった。ほんとはD(我が唯一の友人)も誘われてたのだけど、彼女は都合により来ることができなかった。待ち合わせ場所に病的に早く行ってしまうわたしは、13時半すぎに中野に着いた。これでもこの病気は柔らかくなってきたほうで、以前は朝9時の待ち合わせに7時に着いてしまうようなこともあった。電車は強風で少し遅れはじめていた。その日春の風は暴力的にはしゃいでいるようで、風の日が大好きであるところのわたし玄冬は、幸せが胸の中で膨らんでいくのを感じていた。私は、色の濃いストレートジーンズに、白い洗いざらしのブラウスをてろっと一枚着ているだけで、春とはいえ、人々はなんとも寒々しいものをみるように私を見た。風で電車は遅れていたから、二人は約束の時間に遅れてきた。二人が改札から出てくるまでのあいだずっと、わたしは風にふかれて幸せに突っ立っていた。Tさんはいつもの紺のニット帽に、あの素敵な薄いデニム地の上着を着て、ヴィンテージのバンズのスリッポン、赤と青と白の市松模様、眼鏡はこのあいだの円い井戸多美男ではなく蔓が白銀の金属でフレームの下半分が透明上半分が黒の四角いあれ。Kさんはこれまたいい味出してるジージャンを細長い体に纏っていた。話しながらてろてろアーケードの中を歩いて、まんだらけに向かった。ブロードウェイの中に点在するまんだらけの店舗をぐるっと巡って、いろいろなものを見ていろいろなことを話した。Tさんに缶ジュースを奢ってもらった。Tさんたちと馴染みのあるまんだらけの店員さんとも話をした。あとからきいたけど、その人はまんだらけの中でも偉い人なのだそうだ。17時過ぎまで、いや18時近かっただろうか、まんだらけにいた。途中Tさんの携帯に電話がかかった。仕事のことらしかった。5分くらいだったろうか、Tさんは電話で話をしていた。まんだらけを出たあと、ご飯を食べようということで、アーケードを脇に曲った。どうやらTさんは焼肉を食べる心づもりだったらしく、私が、一昨日Dと焼肉を食べたと言ったら途方に暮れていた。気をつかってくれて、別のものを食べようということになったが、あたりは居酒屋が多くなかなか決まらない。Tさんは辛いものが苦手らしい。うろうろうろうろ三人で徘徊して、とうとう線路をくぐって南側に出てしまった。そこで、Tさんが以前友達と行ったことがある洋食屋さんにしようということになった。洋食屋さんというより喫茶店という佇まいのお店だったが、メニューはとてもしっかりしていた。Tさんが、かぼちゃプリンは絶対に食べた方がいいよと目を輝かせた。Kさんはフォアグラのソテー、Tさんは煮込みハンバーグ、私は和風ハンバーグを注文した。わたしは優柔不断で決められなくて、てきとーにたのんでみたらなんと三人の中で一番値段が高かった、ご馳走してもらうことになってたので(というかこのメンバーで食事をするとき私はいつも奢ってもらっている)失敗したなと思った。実を言えば私はハンバーグがそんなに好きではないのだが、ここのハンバーグはとても美味しかった。例によってなぜか私の頼んだものが一番出てくるのが遅くて(「煮込み」よりは早く出てくるのではないかと期待していたのだけれど。)、そして私が一番たべるのが遅かった。二人は急がなくていいよと言ってくれたけれど、Tさんの目の前で(しかも喫茶店風だからテーブルが小さくて距離が近い)ものを食べるのが恥ずかしくて、かなり焦った。きれいに食事をとれるのが私の取柄だけれど、このとききちんと食べられていたか、自信がない。食後にKさんとTさんは紅茶、私はコーヒーを飲んだ。コーヒーが、私の苦手な酸っぱいやつだったのだけれど、不思議に濃くて美味しかった。デザート、Kさんは頼まず、Tさんと私はかぼちゃプリンを食べた。重くてかぼちゃが多くて、なめらかでなくてもさっとしていて、やたら美味しかった。美味しかったからぱっと顔を上げたら、目の前のTさんが、「どうしたの、まずかった?」と変に怯えてしまって、困った。「いえ、美味しいんです」「そう、よかった」。私は感情を表に出すのがどうも苦手であるらしい。いつか高校のクラスメイトに、「玄冬さんはとてもきれいにものを食べるけれども美味しそうじゃないよね、食事してるっていうより栄養摂取してるってかんじ」と言われたことがあった。以来ずっとそれがコンプレックスである。Tさんはとても美味しそうにものを食べる。実は、食べはじめる前から、否、二人に会うよりずっと前から、その日私は頭痛と吐き気に悩まされていた。ちゃんと食べられるか不安だった。ちゃんと楽しめるか不安だった。でも、そんなこと気にするだけ無駄だと思えるくらい、風は強く吹いていて、会話は楽しかったし、ご飯も美味しかった。店を出たのは8時頃で、もう外は真っ暗だった。そのまま三人で電車に乗り、電車の中でもいろいろ話をした。西国分寺を過ぎたあたりから、Tさんの仕事場の話になった。会社で嫌なことがあるのだと、珍しく弱音を吐いている。Dを100倍悪質にしたような後輩がいて、嫌がらせまがいのことをしたと思えば懐いてきたり、とにかくやたら絡んでくるのだという。女の人だという。言わなかったけれど、その人はTさんのことが好きなんじゃないかと思う。そして昨日の昼、何故かまた唐突に、Tさんからメールが来た。「免許とれたって、おめでとう!おめでとう」。なぜこのタイミングなのかよくわからないけれど、メール嫌いのTさんがわざわざメールをおくってきてくれたのは、わたしのことを「友達」と認識してくれたからじゃあなかろうか。嬉しい。


音楽。いいなとおもった。Juana  Molina - Un Dia             http://m.youtube.com/watch?feature=youtu.be&v=NsMYnERBR8Y