2014-09-07,Sun.

わたしたちは、まず最初に生存するという生の事実の異様さに気づき、しかるのちにみずからの特異な立場の異常さに気づくにすぎない。つまり、まず存在することの驚きが、ついで人間であることの驚きがやってくる。だが、わたしたちの状態の異常性こそ、わたしたちの当惑のそもそもの与件となるべきはずのものであろう。人間であることは、ただたんに存在することよりも自然ではない。これは本能的にわたしたちも感じている。わたしたちが自分を忘れ、物体の至福の眠りに同化するときいつも感じる、あの喜びの原因はここにある。


EMシオラン選集4 金井裕訳『時間への失墜』