2014-10-02,Thu. その2

小説を書いてみた。以下はこれだけで完結する一本の短編小説である。おそらく私には才能はないのであろう。


小説「瞳」

今年の夏、一人の男に逢った。赤い内装の喫茶店で、青いスカートを穿いた私はぼんやりと窓の外を眺めていた。男は私の隣に座って、冷えたコーヒーのグラスにガムシロップをだくだくと注いだ。私の左手にはぬるくなったコーヒーカップが握られていた。私は顔を顰めて、その黒い液体を喉に流し込んだ。項を冷たい汗がつうっと伝った。私はふとガムシロップを想って男のほうに顔を向けた。男は黙ってこちらを見返した。その眼は、先程まで私の左手にあったあの黒い液体を湛えているようだった。「あなたはわたしなのですね」私は言った。「どうしてそう思ったのですか」「だって、さっきわたしが飲んだコーヒーは、今はあなたの瞳になってる」「そうですね、そうかもしれません」「ね、そうでしょう、あなたはわたしなのです」