2015-05-30,Sat.

私は自分ほど独創力のない人間を見たことがない(ここで独創力という言葉を使うのは間違っていると思われるかもしれない、しかし独創力というのはほんらい、ここでいうようなものであるはずだ)。私は脳裡に浮かぶ薄暗い幻影を言葉によって、あるいはその他の視覚的聴覚的嗅覚的なやり方によって表現することができない。表現できないことのもどかしさから、私は思考を止め感覚を閉じようとした。しかし、一枚の葉の中の緑の、あるいは光の多彩さ、ひと筋の風の中の香り、温度、肌触り、音の多様さは消すことができない。せかいの全てが叫ぶ。思考しろ!思考しろ!思考しろ!感じろ!感じろ!感じろ!私は、自分を包むこの鈍重で暑苦しい殻を心の底から疎ましくおもう。薄暗い幻影は、ベールを何重にもかぶせた向こうへいってしまった。空を背景にした木の葉や、夜の駅の孤独な光を見たときひらりと眼球の裏側をかすめるものに目を凝らすことができない。




小学校五年生のとき将来の夢についての作文で「作家になりたい」と書いたときから私はこうなってしまったのかもしれない。どうも原因はそこにあるような気がする。