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2016-08-07,Sun.

私の恋したそれそのものが、わたしを拒絶した。あの視線が、わたしを拒絶したのだ。その三時間の間に、そのひとの視線がわたしを穿ったのはたった二回だった。会ったときと、別れるとき。わたしはあの頃いつも見ていたそのひとの横顔を、遺跡の壁画を見るような気持ちで見つめた。でも、そのひとはときどき瞼にある独特の明らかに快くない表情を載せた。その表情はあの頃一度だって現れたことのないものだった。こちらに向けられることのないその視線は明らかにわたしを拒絶していた。わたしの背筋は凍りついたが、わたしは笑顔を保った。笑顔を保つことはできたけれど、わたしは一言も発することができなかった。わたしは貼りついた笑顔の奥の泣きそうな瞳で、そのひとの視線が歪むのを眺めつづけた。我慢しないで泣けばよかった。わたしが泣いたら、あの視線はわたしに向いただろうか。