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2017-05-16,Tue.

W. B. イエイツ『ケルトの薄明』(井村君江ちくま文庫 1993.12)を読んでいたら唐突に杉井光が読みたくなり、たまたま取り出しやすい場所に積んであった『終わる世界のアルバム』(メディアワークス文庫 2012.10)に手を伸ばす。杉井光ライトノベル作家だが、現在生きている小説家としては私の中では3本指に入る。杉井光の言葉は若さによる天動説めいた青さの描写と素晴らしい小道具とで中二病ゴコロを擽り、外科手術のような繊細な無遠慮さでもって私の心の中に大袈裟な感傷を植えつけるのだ。

 

 

新しい香水が欲しい。去年の夏からシャネルの「シコモア」を専ら愛用しているが、甘くておしゃまで若者らしい香りが欲しくなってきた。

「シコモア」は少年のように気高く厳か、真っ直ぐに伸びた木の香り、何千年も生き年輪を重ねる木の中で樹液が脈打ち続けるような、静かな生の感触に満ちた、見失ってしまいそうに高貴な香り。

香水選びはとても難しい。私は、若い女の子がつけるような、普通にデパートに売っているような香水だと安っぽい合成香料に酔って気分が悪くなってしまう。かと言って自然派ブランドの香水みたいな精油の香りそのままといった風情の、捻りのない香りも嫌。

ああ何か良いのがないかしら。

 

しかし、他の香りなんか要らない、と思うこともある。「シコモア」は特別な香りだ。私にとって、あるいは少年の気高さを宿すことを夢みる全ての人にとって。